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2009年3月3日火曜日

硝子のハンマー


ずいぶんと長いこと積んどかれた本をようやく読んだ。
貴志祐介の「硝子のハンマー」だ。

貴志祐介の「黒い家」を読んだときはものすごい衝撃を受けた。
人間の陰湿な部分、おどろおどろしさを徹底的に掘り下げ、読んでて背後に人の気配を感じて恐怖を覚えたり、人に会うのが怖くなったりした。
しかし、恐怖におびえながらも、負の魅力たっぷりに書き上げる文章力、展開の巧みさで、ぐいぐいと引き込まれていくのだ。
読むのがやめられなくて、一息で読んでしまった。

しかも読後しばらくして実際に起きた凄惨な事件、そう「和歌山毒入りカレー事件」。
この事件に内容が非常に酷似していて、戦慄でしばらく震えが止まらなかった。

そんな貴志祐介の著作は、新刊が出るたびに買っていて、そのどれもがすばらしかった。

さて話を戻して「硝子のハンマー」である。
密室殺人事件を解く弁護士とセキュリティ専門家のお話です。

複線のないまま新事実が出現することによって謎が解けてゆく。
良いところまで追い詰めてその仮説は間違っていた。
という展開が2度。
自分で謎を解きたい人には不愉快かもしれない。
しかし大きな枠組みで見ると、実は最初からヒントは用意されている。
それをただ話の中に持ってこないことで、意識からそらされているだけということが後から分かるというオチが、私的にはもやもやしながらも良かった。

主人公の話口調が前半と中盤以降で全然違うのが、かなり気になるけど、それでもやはり流石の文章力でぐいぐい読ませる。

ミステリーのテクニックという面で見ると評価は低いが、読みやすい文章と小さな展開でぐいぐいと引っ張る構成力、セキュリティシステムというマニアックな世界をかなり奥深くまで掘り下げた取材力によるネタの面白さで、総合評価としては、やはり「貴志祐介は面白い!」と思わせる良い作品でした。


余談ですが、DJ MIXでたとえるならば、3部構成であること、荒削りのテクニック、ぐいぐい引っ張る展開であることから、小説会のJEFF MILLS / MIX-UP vol.2であると言えるでしょう。


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